●机の「正」の字●
机②
…コー…ン カーン…ーン…
ホームルームが始まる時間の鐘が、
遠く聞こえる。
目をあけるつもりはなかった。
ついつい、と
宇津見が横腹を指でつついた。
けれど無視した。
余計なおせっかい…。
担任の声がする。
委員長が、「起立」といった。
礼、といった。
着席、を噛んだ。
ぷ、と笑ってしまったが、
起きようとは思わなかった。
先生の話は、なんとなくきいていた。
「えー、突然ですが、
急きょ、進路変更により、
このクラスに編入してくる者がある。
入ってきたまえ」
誰だろ…?
このクラスは、進学コースとかいうらしい。
大学にいくことが目的なのだそうだ。
知らないけれど。
ガラガラ、とドアがあいた音がした。
コツコツ、と歩く音。
ぴたりと止まった。
教壇の前に立った。
ああ、いよいよしゃべるんだろう。