a girl as a dool
「ジュンちゃん♪」
始業式が終わった瞬間、後ろから不気味な位明るい声がかかり、同時に両肩に重荷。
「んだよ、気色悪い」
うんざりして肩に巻き付く両腕を外しながら振り向く。
そこには予想通りにやついた陽平の姿。
「ね、まぢで惚れちゃった?」
陽平が耳元に顔を近付けて聞いてくる。
「はーなーれーろ」
容赦なく振り払う俺に、陽平はめげずに再度聞く。
「で?」
何かを期待するような、キラキラした視線。
あぁ、うざい。
そう思った俺は、シカトを決め込んで教室に足を進めた。
「めっちゃガード堅そうですけど勝算は?」
まるでレポーター気分で、俺の口元に握りこぶしを向ける陽平。
「だからそんなんじゃねぇって」
その手を振り払いながらそう答えると、陽平はつまらなさそうな顔。
「つまんね」
拗ねたように口を尖らせ、俺の隣に並んで歩く。
「ま、あれは厳しいし止めた方がよさそうよね。何か変わり者みたいだし」
人混みの中、少し先を歩く彼女を見ながら陽平が言う。
好きとか、そんなんじゃなくて。
ただ何か気になるだけ。
あの決して崩れなさそうな人形のような顔の、瞳の奥が。