a girl as a dool
「お疲れさん」
休み時間になって黒板を消している俺に、缶コーヒーを持って寄ってくる陽平。
「ちょっと外の空気吸わん?」
そう聞いてくる陽平に、俺は頷いて作業を急ぐ。
「あたしやるからいいよ」
黒板の反対側から作業をしていた渡邊茉央に言われる。
「お前じゃ上の方届かないっつーの」
思わず笑って返すと、彼女は黙ってまた作業を続ける。
クラスでも一際小柄な彼女は、黒板消しの端を持って懸命に上の方を消している。
「ほらよ」
横から割り込んで、陽平が彼女の領域を手伝う。
「ありがと」
制服についた白いチョークの粉を払いながら、彼女がぽつりと言った。
その表情は相変わらずにこりともしていなかったけど。