a girl as a dool
薬指
「ねー、たまにはお話しながら作業しません?」
放課後の教室。
グラウンドが部活動生で賑わう時間。
その様子が見渡せる教室の窓際で、黙々と資料作りに打ち込む二人。
そう、俺と渡邊茉央。
「口より手を動かした方がいいでしょ」
相変わらずにこりともせずに、可愛さの欠片もない言葉を返す目の前の美人。
学級委員になってもう十日ほど経ったが、何も変わらない俺達の関係。
「はぁ」
これも全部、資料作りをホームルームで忘れた島内のせいだ。
なんて心の中で担任への責任転嫁を試みてみたりする。
そんな俺の心の中を知らないのか、知らないふりをしているのか。
目の前の美人はひたすら作業を進める。
「お前部活とかしてねぇの?」
とりあえず会話がないのは気まずすぎて、無難な質問を投げてみる。
「してない」
素っ気なくそう返し、こちらに視線を向けることさえない。
いや、普通そこは聞き返すだろうが。
心の中で彼女の返答を聞き返す俺は、仕方なくまた自分から話し始めた。