a girl as a dool
「お前ピアノとか弾けねぇの?」
「何で?」
挙げ句の果てには質問を質問で返しやがる。
こいつは言葉のキャッチボールってものを知らないんだろうか。
もはや突っ込むことさえ疲れた俺は、諦めて会話を何とか続ける。
「何か雰囲気お嬢っぽいし」
目の前の人形みたいな顔が、一瞬だけこちらを向く。
その瞳が少し動揺で揺れたのを俺は見逃さない。
「ピアノは辞めた」
また作業に没頭しはじめた彼女は、呟くようにそう答えた。
「そ」
何だか突っ込んじゃいけない気がして、俺はただ相づちを打っただけ。
綺麗な指してんのにな、なんて彼女の指を見つめる。
―バサッ
「ちょっと何してんのよ?」
思わず出来上がった資料の山を派手に散らかした俺に、呆れたような声をかける彼女。
「悪ぃ」
先にしゃがみこんで資料を集める彼女に並んで、俺も資料を集める。
けれどもつい気になって見てしまうのは、やっぱり彼女の指。
左手の薬指。