a girl as a dool
「…大丈夫?」
騒がしいギャルたちの去った階段の踊り場。
何となく気まずい雰囲気が立ち込める中、何とか渡邊茉央に声を掛ける。
「平気」
彼女は捕まれて乱れた制服を正す。
「平気じゃねぇだろ?危うく殴られるところだっただろうが」
相変わらず顔色一つ変えない彼女に、呆れながら声を掛ける。
彼女は俯き、小さく息を吐いた。
「ありがとうございました」
俺たちに聞こえるか聞こえないかの小さな声。
彼女は言い終えると再び顔を上げ、俺と陽平に視線を送る。
もういいでしょ?
まるでそう問い掛けるような彼女の視線。
「ま、気を付けなね」
雰囲気を察した陽平が軽い感じでそう言うと、方向を変えて階段を下り始める渡邊茉央。
「渡邊」
数段下りた彼女が振り向き、再び視線だけで用件を尋ねてくる。
「無理すんなよ」
俺がただそう言うと、彼女は一瞬眉間にシワを寄せるようにしてからまた背を向けた。