a girl as a dool



教室に戻ると、不機嫌そうな南が目に入る。


その視線の先には、渡邊茉央。


さっきあんなことがあった渡邊茉央は、特に気にした様子なく席に着いていた。

『いい加減気付けよ』


ふと、陽平のさっきの言葉が頭の中でリフレインされる。


さっき俺は、いつもなら関わらないいざこざに、気付いたら止めに入った。


身体が無意識に動いてた。


渡邊茉央を守りたいって思ったから。


けどあんな状況でもあいつは、助けなんて求めてなかった。


それに何故か腹が立った。


もっと俺を頼ってほしいって。


もっと俺にも弱さを見せてほしいって。


どっかに存在する男じゃなくて俺を頼れよって。


「はぁ」


俺は大きく溜め息をついた。


いつのまに、俺はこんなに渡邊茉央に執着しちまったんだろ。


絶対めんどくせぇタイプなのに。


振り返ってあいつをもう一度見る。


あぁ初めて見たときからか、なんて自分に呆れながら笑う。


あの瞳の奥の哀しみの色を見たときから。














< 29 / 30 >

この作品をシェア

pagetop