a girl as a dool
教室に戻ると、不機嫌そうな南が目に入る。
その視線の先には、渡邊茉央。
さっきあんなことがあった渡邊茉央は、特に気にした様子なく席に着いていた。
『いい加減気付けよ』
ふと、陽平のさっきの言葉が頭の中でリフレインされる。
さっき俺は、いつもなら関わらないいざこざに、気付いたら止めに入った。
身体が無意識に動いてた。
渡邊茉央を守りたいって思ったから。
けどあんな状況でもあいつは、助けなんて求めてなかった。
それに何故か腹が立った。
もっと俺を頼ってほしいって。
もっと俺にも弱さを見せてほしいって。
どっかに存在する男じゃなくて俺を頼れよって。
「はぁ」
俺は大きく溜め息をついた。
いつのまに、俺はこんなに渡邊茉央に執着しちまったんだろ。
絶対めんどくせぇタイプなのに。
振り返ってあいつをもう一度見る。
あぁ初めて見たときからか、なんて自分に呆れながら笑う。
あの瞳の奥の哀しみの色を見たときから。