a girl as a dool
「ねぇ紗智子、あの美人誰?」
早速隣の席の奴にリサーチする陽平。
「あ、二人去年F組か」
一人納得したように頷くこの女は、川井田紗智子とゆうらしい。
一年F組は、学年でただ一組だけ旧校舎に位置していた。
今俺らがいる新校舎は、去年できたばかりらしい。
そして今年の卒業生はG組まであった関係で、はみ出し者だった。
ま、だから俺は知り合いが少ないのかもしれない。
陽平の影響か、俺のこと知ってる奴は何故か多いが。
「去年の終わりにA組に来た転入生だよ。渡邊茉央」
「くそ、チェックが甘かった〜。あんな可愛い子去年からいたなんて」
大袈裟に悔しがる陽平に、俺は呆れて溜め息。
つんつんとワックスで立てられた茶髪を崩してやる。
「ね?渡邊茉央が何て言われてたか知ってる?」
そんな俺たちに、川井田がにやっと笑いながら聞いてくる。
「何、気になる〜♪姫とか?」
能天気に言う陽平に、本日二度目のチョークが飛ぶ。
「静かにしろ!!」
島内が顔を真っ赤にして怒り、クラス中から笑いが起こる。
俺までチョークの餌食にならぬよう、俺は一先ず前を向いて座り直した。