a girl as a dool
「氷の姫」
「は!?」
休み時間になった瞬間に俺の耳元で言う陽平。
「他にも色々あるらしいぜ、呼び名」
笑わぬ姫とか、無表情姫とか、と続ける。
あぁ、渡邊茉央のことか。
俺はさっきのクラスのやり取りからそう読み取った。
誰もが拒否した学級委員は、結局明日のホームルームに決めることに。
元々この学校は、この辺じゃ有名な馬鹿校だし優等生なんてなかなかいない。
「てか渡邊さんって都内のお嬢様学校から来たらしいよ?頭バリバリいいらしい」
陽平は川井田から仕入れたであろう情報を俺に流す。
「って、実はちゃっかりジュンも賢いしな」
からかうように笑いながら、陽平が言った。
俺は大袈裟に腰に手を当て、胸を張る。
「お前素行さえよければ学級委員なのにな」
俺の金髪をぐしゃぐしゃに掻き乱しながら、陽平が笑った。
「俺は型にはまるのは嫌いなんだよ」
格好つけたように言って、陽平の手を払いのける。
お返しに、陽平の髪をぐしゃぐしゃにしてやる。