a girl as a dool
「陽平〜体育館移動だってさ」
廊下から川井田が呼び掛け、陽平が席を立つ。
続いて廊下に向かった俺を呼び止めたのは、思ってもいない人物。
「曽我くんはこっちだって」
初対面だというのに表情一つ変えないまま、俺を皆と反対方向へと促す。
俺は呆然と後に付いていき、クラス中は呆然と俺たちを見ていた。
背中まで伸びた黒髪。
歩く度にさらさらと靡く。
カラーとかしたことねぇのかな。
何か歩き方まで綺麗で見とれてしまう。
歩き方まで品があるというか、何か魅せられる雰囲気があった。
「はい、入って」
開かれたドアを確認もせずに入った俺。
「よ」
そう言って待ち受けていたのが、先程俺を追いかけ回していた島内だと頭が理解するまで軽く十秒はかかった。
「は!?何!?」
状況の理解出来ない俺に、島内が箱を渡す。
黒染め液。
「別にうちの学校黒じゃなくていいんだけどなぁ」
呆れるように島内が言う。
確かに、うちの学校は緩かった。
ある程度の茶髪とか制服の着崩しとか全然言われねぇし。
「んじゃ染め終えたら始業式に来いよ」
そう言って部屋を出ようとする島内。
俺は無意識に呼び止めて、とんでもないことを口にしていた。