貴方と居た時間。
「な、何でそんな事聞くんですか?」


「いや、なんとなく。」


フーッと煙を吐きながら啓太は言う。
タバコの匂いが立ち込める。
良い出逢いがあったと言ったら、啓太はどんな反応をしたのだろうか。
知佳はそう思いながら、再び検品作業を始めた。


「高村さんはまだまだ若いから、たくさん恋愛できるね。うらやましいな。」


啓太がパソコンの画面を眺めながら、つぶやくように言った。


「そ、そうゆう店長はどうなんですか?」


思わず知佳は聞いてしまった。
急に心臓の鼓動がスピードを増す。
ドクン、ドクン、ドクン…。
動揺を隠すように、検品を進める。


「俺〜?俺はもう恋愛するような年じゃないよー。」


ははは、と笑いながら啓太は答えた。


それはどういう意味だろう。
知佳の頭の中はグルグルしていた。


「四年半付き合った彼氏の事は、もう吹っ切れたの?」


「えっ…。そりゃあもう、とっくに…。」


知佳は返事をするのも必死だった。


「若いのに四年半続くってすげぇよな〜。」


タバコの灰を落としながら啓太が言う。


「そんな事ないですよ。ただズルズルと付き合いが長引いただけです。」
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