貴方と居た時間。
「ははは。そんなふうに言っちゃ元カレ君がかわいそうだよ。」


「て、店長は最高で何年付き合いました?」


「俺〜?」


くるりと椅子を回転させ、啓太は知佳の方を向いた。
しばらく天井を見つめ、啓太は言った。


「九年…かな。」


「きゅっ、九年?!長っ!!」


知佳は思わず米飯ケースを落としそうになった。


知佳が真実を知るタイムリミットはすぐそこまで来ていた。
知佳は危ない危ないと思いながら、米飯ケースをキャスターに乗せていく。


「俺の方が遥かに長かったな(笑)まあ、その九年付き合った彼女が、今の俺の奥さん。」


知佳の手の動きがピタリと止まる。


『今の奥さん』


確かにそう聞こえた。


「え…?」


知佳は啓太に視線を向ける。


「何その顔〜。だから、その彼女が、俺の奥さん。ちゃんと聞いてる?」


フッと笑い、啓太はタバコの火を消した。


『結婚してないんだ?』


美樹の言葉が浮かんでくる。
それは何度も何度も知佳の頭の中で浮かんでは消えた。


「あ、あ〜ぁ!そうなんですね。店長、意外に一途だー。」


知佳は一生懸命笑顔を作った。
胸は張り裂けそうだった。
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