貴方と居た時間。
常識のない客に対しても笑顔で接した。


午後十時。
バイトが終わる頃には、知佳の精神状態はボロボロだった。
早く帰って一人になりたかった。
啓太の居るスタッフルームへ入ると、

「お疲れ様でした」

といいながら、知佳は勤怠処理をした。


「お疲れ様。あ、高村さん、これ…」


そう言うと啓太は一枚の紙切れを知佳に渡してきた。


「?」


知佳はその紙を開き、目を丸くした。


「これ…」


そこには、篠原啓太、と書かれ、携帯番号とアドレスが書かれていた。


「俺の番号とアドレス。登録しといてね。あ〜ほら、シフトの事で急に連絡取らなきゃいけないときとかあるからさ。」


知佳は、ほんの少しでも期待をしてしまった自分が恥ずかしくなった。
業務用連絡の為なんてこと、すぐに分かる事なのだが、啓太に恋をしているからこその勘違いだった。


「わかりました。登録しておきます。」


知佳は紙をバッグに入れた。


「あとさ、」


啓太が続ける。


「はい?」


「何か悩んでたり、辛い時、いや、用事なくても、いつでもメールしてきていいから。」


「え…」


啓太は照れているのか目が泳いでいる。
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