貴方と居た時間。

『気晴らしにどこか行く？今だったら、ホタルがきれいな時期だよ。』


知佳はガバッと起き上がる。


｢て、店長とホタル…｣


胸の鼓動の速さはマックスに近かった。
知佳は息をのみ、返信した。


『ホタル見たいです！ほんとに行けるんですか？』


『もちろん。いつが都合いい？』

知佳は息苦しさを感じていた。
嬉しくて仕方なかった。
まさか啓太との予定ができるなんて、誰が予想できただろうか。


啓太とその後も数回メールのやりとりをし、来週の水曜日にホタルを見に行く約束をしたのだった。

『じゃあ、来週の水曜日ね。ホタルたくさん居たらいいな。
おやすみ。』


啓太からそう返事が来たあと、知佳は眠れない夜を過ごした。


ドキドキ、ドキドキ。


夢のようだ。
夢じゃないことを願いながら、ベタにもほっぺたをつねってみる。

｢イタッ！｣


…夢じゃない。
知佳は一人でニヤニヤしながら、ベッドの上をゴロゴロと転がる。

正人に腹を立てていた事も、すっかり忘れていた。
リビングにお茶を飲みに来た知佳の機嫌がすっかり良くなっており、正人は首を傾げるのだった。