貴方と居た時間。
川一面にキラキラと輝くホタルの光。


「きれい…!」


知佳はホタルに見とれる。
啓太はそんな知佳の横顔を見つめていた。


「実は私、ホタルを見るの初めてなんです!すっごい感動しちゃった…。」


「そうなんだ?こんなにキレイに見えるなんて、期待以上だったな。」


ホタルの光。
川の流れる音。
遠くで聞こえる子どもの声。


知佳は時間が止まっているように感じた。
止まればいいと思った。
啓太の横顔を見ながらそう強く思った。


「そろそろ行こうか。」


啓太が言った。


知佳はまだ帰りたくなかった。
啓太と一緒に居たかった。
でも、

「はい。」

と答えるしかなかった。


その時の寂しそうな知佳の表情を、啓太は見逃さなかった。
知佳の左手に触れようとした右手を、静かにさげた。


知佳はそんな啓太の行動を知るよしもなく車に乗り込んだ。


窓からホタルの光を眺めながら、川を離れた。


車を運転しながら啓太が口を開いた。


「誕生日はいつ?」


知佳は突然の質問に驚いた。


「え…っと、三月十八日です。」


ふーん、と啓太は頷き、


「じゃあ血液型は?」
と、質問を続ける。
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