貴方と居た時間。
結婚しているような、そんな素振りは見たことがなかった。


啓太が結婚しているなど、知佳は考えたくもなかった。
授業中もその事で頭がいっぱいで、とても授業どころでは無かった。


啓太に直接聞いてみようか。
でも聞くのも怖い。
ましてやそんな事を聞くなんて、自分の気持ちがバレてしまいそうだ。


万が一結婚していたら…?


カタンッ。


持っていたシャーペンが落ち、知佳はハッと我に返る。
ダメだ。余計な事を考えるのはやめよう。
そう思い、授業に気持ちを切り替えたのだった。


窓の向こうでは飛行機雲がゆっくりと進んでいた。
どこまでもどこまでも、白い線を描きながら…。




―ねえ、啓太。

私は今でも後悔してないよ。
貴方を好きになった事。

貴方に出逢えて、ありきたりな毎日がキラキラしてみえたんだ。

啓太にとって、私との出逢いはどんなふうに感じ、過ごしてた?




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