貴方と居た時間。
知佳は自分に何度も、大丈夫と言い聞かせ、バイトに向かった。


「おはようございます。」


挨拶の言葉は朝も昼も夜も一緒だ。
店内に居る従業員と挨拶を交わしながら、知佳はスタッフルームへ入った。


「あ、高村さん、おはようございます。」


いつもと変わらない啓太の笑顔。知佳の胸は自然にキュッとなる。

「おはようございます…。」


知佳は無意識に啓太の左手の薬指を見ていた。
やはり指輪は無い。
業務机の上にはおでんのカップが置かれている。
奥さんが居るのなら、愛妻弁当なのではないか…。
知佳は少し安堵した。


「なんか、元気なくない?大丈夫?」


啓太が心配そうに聞く。


「え、あ…全然元気です!大丈夫です!」


知佳は笑顔で答え、制服の袖を通す。
勤怠ボタンを押し、名札のバーコードをスキャンする。
午後一時五十五分、シフトイン。

「じゃ、今日は…」


啓太から仕事内容を聞き、知佳は店内へ入る。
レジに入り、二時あがりの人と交代する。
今日は、一時から一足先にシフトインしていた田本茂(20)と午後十時までの勤務だ。
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