君色
君じゃないあの人
映画館の近くに新しく出来たパスタのお店で
カルボナーラと明太子のパスタを食べた。
お店を決めるのはほとんどいつも私。
自分で好き勝手に決められるから別に嫌とかじゃないんだけど
雅史のお気に入りのお店に連れて行ってもらったりしたいな
なんて、思ったりすることもある。
そこが超オシャレなお店だったりしたらもっともっと雅史を好きになるだろう。
ま、期待してないけどね。
表に出ると、雨があがっていたから
近くの公園のベンチでいつもみたいに少しだけ他愛のない話で盛り上がっていたのだが
再び怪しくなる雲行きを心配してお互い家路に着いた。
公園を出て、駅に向かって暗い夜道を一人で歩く。
駅まで送ってくれたらもう少し一緒にいられたのに、なんて考えてしまう。
それに、夜道に一人はやっぱり少し怖かった。
まぁ、あいつがそんなことに気付くわけもなく私はため息を落としたんだけど。
期待しちゃいけない。
あいつはあの人とは違うんだから。
あの人だったら
きっとこんな寒い夜にはそっと上着を脱いで私の肩にかけてくれるんだ。
危ないからと言って家まで送ってくれるんだ。
あの人だったら
私の隠れた気持ち、強がりや言い分を全部掬って、全部受け止めてくれるんだ。
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