君色



由佳子はいつだって純真無垢な優しい笑顔を私にくれる。

いつだって私のことを心配してくれて、繊細なガラス細工を扱うみたいに私をそっと支えてくれるんだ。

今日も、いつもと様子が少し違う私にすぐ気付いて、こうして自分のことの様に心配してくれている。

自慢の親友だ。


「由佳子……あのさ、私」


言い出した私を怪訝そうな顔で窺う由佳子。


「先生とね……」


うん、と由佳子が肯く。

真剣な目をして身を乗り出したからテーブルの上のオレンジジュースがグラスの中で小さく揺れた。


「私ね……実は先生とね……


ラブラブなんだぁ~!」


わざとらしく零された大きなため息が静かな部屋の空気に溶けた。

由佳子は頬杖をついて目を細める。

これで安心してくれたかな。



私は由佳子に雅史とのことを言えずにいた。

先生とのことを一番に伝えた時のように、新しい彼氏が出来たんだよ、って雅史のことも由佳子に一番初めに伝えたかった。

けれど怖くて出来なかった。

軽蔑されるんじゃないか、って真剣にそう思ったから。



由佳子はまたあの笑顔を私に向ける。

優しい無垢な純白の笑顔。

由佳子がいれば、どんなことだって乗り越えられる。

照れくさいから言えないけど、そんなことさえ思えるんだ。

だけど、どうしても言えない。

先生との関係がいつかうやむやになって、このオレンジジュースに溶けた泡みたいに消えてなくなったら、その時ちゃんと言おう。

きっとその日は遠くない。



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