君色



「ちゃお~!理香~!」


雅史が私に気付いて元気に手を振った。

少し緊張する。

美幸も言っていたけど、今日は朝少し時間があったから何となく髪の裾をカールしてみたんだ。

それに新しいリップも使ってみた。

ついでにブレスレットだって変えちゃった。

雅史が好きそうなふわふわの巻き髪。

雅史が好きそうな可愛いピンク色のリップ。

雅史が好きそうな、派手すぎない水晶のブレスレット。

雅史は気付いてくれるかな。


「おはよう、雅史、元気?」


自分の席について髪を耳に掛ける。

さっき美幸と買った温かい缶のココアを一口飲んだ。


「元気だよ!何か暇だったから健に会いに来た!」


雅史が私の右斜め前の席に座る健を指して言う。

私は一番左の列の一番後ろの窓際特等席。

カーテン越しの日差しは少し暖かい。


「おい雅史、お前に会いに来たんだ、って言うとこだろ」


すかさず健が雅史を肘で打つ。


「理香……会いに来たぜ!」


はいはい、と投げやりに応える私。

ココアの缶が冷えた指先を温めてくれる。

急に雅史が私のココアを取り上げた。


「温か~い」


顔面の筋肉を緩ませて、雅史が言う。

私がふくれっ面を作ると健が雅史からココアを取り上げた。


「それより理香ちゃんその髪パーマあてたの?可愛いじゃん」


健が缶を私に戻した。


「え!?け、け、健!お前!何で俺の台詞を真顔で言っちゃったの!?」


雅史が勢いよく席を立つ。


「いや、お前が何も言わないから代わりに言ったんだ。感謝しろ」

へらへらと笑う健。

口を開けたまま何か言いたげに私と健を交互に見る雅史に思わず健と二人で笑った。



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