君色



刹那

カラスのまぬけな鳴き声が雅史の小さな声を打ち消す。


「けど、やっぱちゃんと言いたかったんだ。理香がせっかくオシャレしてきたのに俺ほんとドキドキしすぎて何にも言えなかった……こういう時ってちゃんと言わないとダメだよな……」


公園の野良猫があくびをした。


「……何か俺、理香の友達に怒られたんだぁ……俺全然女の子の気持ちとか、ちゃんと理解出来てないしさぁ……」


きっと美幸が朝の私達の様子をどこかから見ていたのだろう、始業式の後彼女の姿が見えなかったけれど、その時なのかな。

おせっかいでお人よしな私の素敵な友達。

そして素直で愛しい彼氏。



さっき作り上げた、大切な全てが奪われていくイメージが

哀しすぎてまだ私の心を刺激する。

雅史、ごめんね。

こんな彼女でごめん。



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