君色
「今日の理香、本当に可愛い……いや、あの、いつも可愛いけど、今日はいつも以上に可愛いっていうか……とにかく、好きなんだ」
急に視界から彼の火照った顔が消え、体が前のめりになる。
雅史が私の腕を勢いよく引っ張って自分の胸にきつく抱いた。
コートの素材が頬にあたって心地良い。
雅史が震えているように感じるのは、強い風に凍えているからなのかな。
けれど雅史の体はこの世界の何よりも温かくて私にその温度を分けてくれたんだ。
こんな私に
雅史は優しさも素直さも脆さも
全部をさらけ出して
暖めてくれたんだ。
幸せだけれど
本当に幸せだけれど
幸せだからこそ
私の心には先生がちらついて
やっぱり雅史をまっすぐ見れなかった。
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