君色



俯いていた顔をゆっくり上げると先生の顔が歪んで見えた。

涙が止まらなかった。



先生

さよなら…



言いたい。

言えない。



涙が頬を伝って私の手の甲に落ちる。

暖かかった。



先生が濡れた私の頬を指でなぞる。

冷たい指先。

私の涙が先生の指先に滲んだ。

まばたきをする度に零れるしずく。



ふいに、先生が笑った。



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