君色



私の気持ちなど知った事ではないという様に

隣にいる彼は幸せそうな表情で眠っていた。

本当に幸せそうに眠っていた。


寝顔があまりにも可愛くて思わず携帯電話のカメラ機能でその寝顔を保存する。

シャッターの音に眉を動かす彼

ゆっくりまぶたを持ち上げて澄んだ瞳に私を映した。


「おぉ……理香だ。映画おもしろかったよなぁ。俺感動しちゃったよ〜」


彼は眠い目をこすって姿勢を直した。


「はいはい。どうでもいいから早く起きてくれる?」


「あの二人が再会して運命を感じるシーンとかさぁ~」


二人が再会するシーンは始めの5分だ。

5分間は起きてたんだな。


「そこしか見てないんでしょ。もう他のお客さん皆帰ったよ」


「違う!見てた!全部!見た!二人は結婚したんだ!見てた!」


まぁ当たっているけども。


「ほら、当たってるだろ?見たもん、見たもん」


私の心を読んだように彼はそう言って、まるで幼い子供が駄々をこねる様に私の服の袖を引っ張り顔を近付けてくる。


そんなに近くに来たら……

心臓の音が聞こえちゃうくらいドキドキして耳まで真っ赤になってしまう……


「しつこい、馬鹿、キモい、近寄るなぁぁ!」


素直になれない私

彼は可愛く唇を尖らせ私を見つめていた。

ひどいこと言ってごめんね、って言えたらいいのにな。



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