モノクロ
そう言ってぎゅっと抱き締められた。


「圭吾……」


他の誰が来たって、私も圭吾しか見えてないんだよ。

抱き締められた手に応えるように背中に手を回すと、圭吾の体温が心地良くて。


「……好き」


思わず声に出てしまった。


その途端、反転する視界。


「かわいいこと、言うじゃん」

視界いっぱいにニッと口元を上げた圭吾の顔。


「っん」

噛みつかれるようなキスが落とされる。


「ちょ……けい……まっ……」

息継ぎする間も与えられなくて、息苦しさに涙が浮かんだ時、ようやく唇が解放された。



「その目、そそるね」


そう言った圭吾の方がよっぽど色っぽくて、思わず顔が赤くなる。


今度は音を立てて、楽しむようにたくさんのキスが降って来た。

背中を撫でられて、思わず仰け反る。

ブラウスのボタンに掛った手が、ふいに止まった。


「?」

「今日は、やめとくか」

「えっ? 何で?」

言ってすぐ、慌てて口元を両手で覆った。


私、何恥ずかしいこと言ってんの!?


次第に圭吾がニヤけてくる。


「シたいのは山々だけど、また遅刻ギリギリになっても困るしな」

「……バカ」

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