モノクロ


「真央、それって……」

「しーっ」


人差し指を口元に当て、紗依子の口を手で覆った。



文化祭当日、紗依子が着付けをしてくれたんだけど……。


何日か前に圭吾につけられたキスマークがまだうっすら残ってて。


「結構独占欲、強い感じ?」

クスクス笑いながら、紗依子は着付けを再開した。


「……なのかなぁ?」

「余裕っぽいのはフリなんだ?」


「……え?」

相手は年上、とは話してたけど、紗依子の口振りでは相手を知ってるような……って、まさかね。


「はい、出来た。じゃ、行ってらっしゃーい」

紗依子の口から真実が聞かされることなく、私は店番に立った。





教室をバッチリ和の雰囲気に飾り付けて、BGMには琴のCD。

半分が客席で、残りが厨房と小さいけど私達の休憩スペース。

着替え場所はバスケ部の部室を借りている。

遥曰く美男美女揃いのクラスだからか、なかなか盛況だった。


私も、ファミレスのバイトが生かされて、結構うまくこなせてると思う。

だけど次から次へとお客さんがやって来て、息つく暇もない。
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