モノクロ
「真央ちゃん、それ運んだら休憩行っていいよー」

「はーい」


厨房係の亜紀ちゃんからトレイを受け取って、中学生くらいの女の子二人組のテーブルに運んでから裏に下がった。


「……ふぅ」

携帯を取り出すと、新着メールのマークが。


[休憩入ったらメールして]


圭吾からだった。


[今、休憩入ったよ]

すると、すぐに返信が来た。


[準備室にいる]

──それって、来いってことだよね。


遥は実行委員もあって飛び回ってるし、紗依子はまだ着付け中なのか姿が見えない。

休憩スペースには私一人しかいない。


……行ってもバレないよね。



私はそのまま携帯を握り締めて、教室を抜け出した。


化学室がある一帯は上から下まで全部使用禁止エリアになっていて、外部の人が入れないように各階に柵が設けてある。


その柵をずらして廊下の角を曲がると、今までの騒々しさが少し薄れた。


コンコン


一応ノックをしてから、ドアを開ける。

圭吾は窓から外を眺めながら、コーヒーを飲んでいた。



「……いいね」

振り返って私を見ると、そう言って微笑んでくれた。


「ありがと……」

圭吾に浴衣姿を見せるのは今日が初めてだから、ちょっと照れくさい。
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