モノクロ
ピンポーン
いきなり鳴ったチャイムに肩が跳ね上がった。
──誰?
圭吾と一緒にいて、チャイムが鳴ることはほとんどなかった。
一瞬圭吾かな、って思ったけど遅くなるって言ってたし、帰る前に連絡をするとも言っていた。
ピンポーン
そんなことを思っていたら、またチャイムが鳴った。
そっと玄関まで行ってドアスコープを覗くと──女の人が立っていた。
きちんとしたスーツを身に纏った、大人の女性。
いつまでも開かないドアに諦めたのか、新聞受けに何かを差し込んで、その人は帰っていった。
見ちゃいけないって思ってるのに、気が付けば新聞受けを開けていた。
開けると水色の封筒があって、表にはあの人の雰囲気に合ったきれいな字。
“圭吾へ”
あの人、圭吾の何……?
小さく震える手で封筒を新聞受けに戻した。
封をしていない中身を見なかったのは、私なりの小さなプライド。
圭吾とあの人がどういう関係かわからないけど、あの人はきっと圭吾のことが……。