モノクロ
何も見なかったことにしてご飯を作っている時、携帯が鳴った。
時計を見れば、もう9時になろうとしていた。
[これから帰るよ]
予想していたよりも圭吾の帰りが遅い。
もしかしたら、さっきの人と……なんて、嫌な想像が無意識に頭をよぎる。
圭吾と会ってたなら、あの人がわざわざここに来る必要なんてないのにね。
信じてるのに不安になる。
好きだからこそ不安になる。
初めて一緒に過ごすクリスマスなのに、こんな気持ちで圭吾といるの嫌だよ……。
うっすら涙が浮かんできた時、チャイムが鳴った。
ドアスコープから覗くと、そこには圭吾が立っていて。
「ただ……おわっ」
ドアを開けた瞬間、圭吾に抱きついていた。
「真央? どうした?」
「……おかえり」
涙で声が震えそうになるのを我慢して、圭吾の胸に顔を埋めた。
「とりあえず、中入るか」
圭吾に頭を撫でられて、少し落ち着いた。
小さく頷いて、圭吾から離れた。
冷蔵庫を開ける音がしたから、ケーキを入れてるんだろう。
その間に滲んだ涙を拭おうとした手が後ろから掴まれた。
「!?」