モノクロ
壊れる家族
あれは、中学校の卒業式が終わってすぐの週末だった。
卒業祝いと入学祝いを兼ねて、家族三人で近くの温泉へ旅行に行くことになった。
特に何か観光出来る場所があるわけじゃないけど、家族でたくさん話をした。
中学校のこと、友達のこと、これから入学する高校のこと。
“明日”は普通に来るんだと思ってた。
普通に高校生になって、帰りが遅くなってお父さんに怒られたり、好きな男の子の話をお母さんとこっそりしたり。
そんな普通の明日は──どうして来なかったの?
一泊二日の短い旅行だったけど、すごく楽しかった。
帰りの車の中。
お父さんが運転手、お母さんは助手席、私は一人、後部座席。
お父さんの予想に反して高速道路は空いていて、快調に家に向かってた……はずだった。
何がどうなったのか、正直今でも良くわからない。
気が付いた時には病院のベッドの上だった。
白いカーテンに消毒の匂い。
車に乗ってたはずなのに、どうしてこんな所にいるのかわからなかった。
お父さんとお母さんの姿はどこにもない。