モノクロ
だけどすぐに私から視線を外すと、気を取り直すように“ごほんっ”と咳払いを一つして、

「担任をすることになりました、久我圭吾です。教科は化学。一年間よろしく」

と挨拶をした。


トントン


後ろから突かれて小さく振り向くと遥が、

「先生もカッコ良くない?」

って耳打ちしてきた。


改めて久我先生に目を向ける。


カッコイイ……かな、うん。

スーツが似合ってて、大人の雰囲気がある。


でも、どっかで見たような気がするんだけど……思い出せない。

しかも、声にも聞き覚えがあるような、ないような……。



「とりあえず自己紹介でもしてもらおうか。じゃ、廊下側の一番前から」


先生はそう言うと、隅に立て掛けてあったパイプイスを窓際に持っていき、出席簿を見ながら顔と名前を確認しているみたいだった。



あれくらいの年の知り合いなんて、いないしなぁ……。



「……次、高岡」

「……はいっ」



思い出そうとして自己紹介を聞き流してたから、いきなり名前を呼ばれて驚いた。



「高岡真央です。よろしく……お願いします」

何も考えてない状態で順番が回って来たせいで、うまく話せなかった。



「なんだ? それだけか?」

「は、い……」

「ま、いいか。次、都築」



ほっとして座ると、今度は後ろに座ってる遥の番。
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