モノクロ
「ところでそのピアス、いつ開けたんだ?」


「……は?」

「ピアスだよ。いつ開けた?」


何でいきなりそんな事聞くんだろう。


今まで何も言ってこなかったんだから、校則違反ってことはないと思うけど……。



「一か月くらい前、ですけど」

「そうか」


先生はそう言ったきり、何も言わなかった。


「あの、はる……都築さん、待たせてるんですけど?」

「あぁ、そうだったな。もういいぞ」

「失礼します」


返事を最後まで聞くより前に背を向けて、ドアに手を掛けた時だった。


「マイ」

「なっ……!」

ドアに手を掛けたまま振り返る。


「ちょっ……やめて! くださいっ」


いきなり“あの名前”で呼ぶから思わず声が大きくなる。


「そうやって、感情は外に出した方がいいぞ」

久我先生はケラケラ笑って、コーヒーを淹れ始めた。


「失礼しますっ!」

勢いよくドアを開けて、わざと大きな音を立てて閉めてやった。



……バカ教師。





「ごめん、お待たせ」

下駄箱に寄り掛かっている遥に声を掛けながら、私も靴を履き替えた。


「久我っち、何だって?」

特に女子の間ではこんな風に呼ばれている。


一番若いし、しょうがないよね。


「マジメに勉強しろよ、みたいな……?」

何って聞かれても、結局何が言いたかったのか、こっちが知りたいよ。


「何それ?」

遥はそう言ってケラケラ笑った。



私にもわかんないし……。


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