モノクロ
いつもは上着を脱いだスーツに白衣を着てるんだけど。

今日は旅行ということもあってか、いつもよりラフだった。


それが少しだけ、“あの日”を思い出させる。



「欠席なし、と。じゃ、班ごとでまとまってバス乗れ」

荷物を持って教室を出ようとした時、先生と目が合った。


少しだけ口元を緩めて微笑んだ、気がした。


……何よ。


最近、アイツは私と目が合うと、そんな顔をしていることが多い気がする。

あの時の、柔らかい笑顔のような。


何なのよ……もう。





通路を挟んで向こう側に紗依子と淳くん。

前の席に遥と琢磨。

私と貴文くんが並んで座った。

特に相談することもなく、自然と決まった組み合わせだ。


前の席から、遥の楽しそうな声が聞こえる。

琢磨、ねぇ……。



「心配?」

「え?」


見ると、貴文くんが前の席を指さしていた。


「そんなんじゃないよ?」

中学の頃も琢磨との仲を誤解されることは良くあった。


「貴文くん、彼女は?」

あまり口数の多い方ではない貴文くんは、私の中ではちょっと謎が多い人物だ。


「高岡こそ、どうなの?」

そのまま返されてしまった。


誤魔化すように微笑むと、貴文くんも同じように笑った。

紗依子と同じで、大人っぽくて落ち着いてる印象の貴文くん。



……淳くんと一緒だから、余計にそう感じるのかも。
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