モノクロ
急いで顔を洗って、メイクをしようと鏡の前に行くと、変わらずそこには“うさぎ”がいて。


その横に──あの紙袋。


私に耳にはまだ、ファーストピアスがついている。


好き、なのかな……。


自分の気持ちがはっきりしたら、と思って袋に入れたままにしてある。


……琢磨のことだって、はっきりしないままだし。


「あー、もうっ!」


思わず声に出して叫んだ。

こんなに悩むのは性に合わないのに。


誰かに聞いてもらいたい。

誰に聞いてもらえばいい?


でも、先生のことなんて、人には話せないしなぁ。

結局、どっちも自分で解決しなきゃいけない問題で。


無意識に写真に目をやると、変わらず両親は微笑んでいた。


「こういう話、したかったのにな……」




駅に着きそうな時間をメールして、私は琢磨の家に向かった。

元々自分の家もあった場所だし、電車から眺める風景は少し懐かしくもあった。



「琢磨」

改札を出ると、琢磨の後ろ姿が見えた。


高校生になって趣味が変わったのか、服装が大人っぽくなった気がする。
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