モノクロ
生徒とご飯なんて食べてたら、マズくない?



「ここでいい?」

「ここはっ……ダメ!」


そう言って指さしたのは、もちろん私のバイト先で。


「何で?」

「バイト先、だから……」

「じゃ、別のトコにするか」


先生はまだおかしそうに肩を震わせていた。





一緒に食事をし、二度目に入った先生の部屋は、相変わらずきれいだった。



「コーヒー淹れるから座ってて。……甘いモンだったらまだ食える、だろ?」

煙草を咥え、キッチンに向かう後ろ姿を眺めて首を傾げた。


甘い物?


座ってて、と言われたものの、何となくソファに座るのは気が引けて、初めて来た時のように床に直接座った。



「何で床?」

笑いながら、カップを二つと小さな箱を持ってきて、テーブルの上に置いた。


「?」

何だろう?


「今日、誕生日だろ」

「えっ……なん……」

何で私の誕生日、知ってるの?


「俺、これでもお前の担任だし」


私、よっぽど“何で?”って顔してたんだろう。

先生はため息をつきながらそう言った。


……あ、そっか。


小さな箱を開ける手に注目していたら、中からかわいらしいケーキが出て来た。

チョコで出来たプレートにはちゃんと“HAPPY BIRTHDAY”って書いてあって。



「歳の数だけ立てたいところだけど、すごいことになりそうだからな」

そう言って笑いながら、二本のろうそくを立てた。
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