モノクロ
「……何で、2本なの?」

「俺とお前、みたいな?」

「……っ」


こんな、キザだと思うセリフにすら、顔を赤くしてしまう。

そんな私の反応を見て、先生はやっぱり肩を震わせて笑っていた。



「電気! 消してっ」

「はいはい」


赤い顔を見られないように、電気を消すように言った。

照明の落とされた部屋の中。

テーブルに置かれたケーキの灯りが小さく揺れていて。

幻想的できれいだと思った。



「俺、オンチだから歌わないよ」

電気を消して戻って来た先生は、私の隣に座った。


「歌ってよ」

今度は私がクスクス笑いながら言う。


「手でも握ってくれたら歌ってやる」


──……。


先生は意地悪のつもりで言ったんだろうけど……。

私は逆にきっかけを作ってもらったような気がして。


──そっと、先生の手に自分の手を重ねた。


手が触れた瞬間、ビクンってした気がするけど、指先を絡めて繋がれた。


恥ずかしくて視線を向けることは出来なかったけど、先生は歌ってくれた。

……もちろん、ヘタなんかじゃなかった。



「はい、消して」

月明かりも加わって、幻想的な風景がもったいないな、って思ったけど。


「じゃあ、消すね」

大きく息を吸い込んで、一気に吹き消した──その時。





「……っ」
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