モノクロ

「……うん」



あの時は、ホントに生きてるのか死んでるのかわかんなかったし、死んでもいいと思ってた。


でも、あの時、あそこに立ってて良かった。


先生と生徒として出会ったらきっと……始まってなかったと思うから。



「ねぇ?」

「ん?」


ずっと聞きたいと思ってたことがあった。


「入学式の日、すぐに私だってわかった?」

「ん? あぁ……。まぁな」

「どうして?」


髪の色だって違ったし、メイクだって濃かったのに、どうして気付いたんだろうって、ずっと不思議に思ってた。


「目、かな」

「目?」


「前日に見た“マイ”と同じ目してた」


それって……どんな目だろう。


「高校の入学式なんて、みんなキラキラした目してんのに、お前は何かつまんなそうな目してた」

「……そっか」


確かにあの頃、高校なんてどうでもいいって思ってたもんね。


「あとさ。どうして……その……ホテルまで行ったのに……」

「ヤらなかったかって?」

「……」


黙ったまま頷いた。

……他の言い方ってないのかな。

頬に熱を感じる。


でも、ホテルまで行ったら、普通は……そうなるでしょ?

ナンパした相手だし?
< 92 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop