モノクロ
「帰るのか?」

「はい。……何か、用ですか?」


そう言うと圭吾は、少しだけ寂しそうな顔をした。


……言い方、冷たかったかな?

だって、なるべく普通に接しようとしたら、そうなっちゃったんだもん。


「ちょっといいか?」

「……はい」


怒ったのかな?

ちょっとドキドキしながら後ろを歩いて準備室に入る。


……他に化学担当の先生がいないんじゃないかって思うくらい、ここで他の先生に遭遇することがない。



「……何か冷たくない?」

二人きりになった途端、“先生”から“圭吾”の顔になった。


「だって……」

バレたら困るじゃん。



「お前の誕生日の日、だったかな。ここで言いかけたこと、覚えてるか?」

「?」


どのことだか思い出せなくて首を傾けた。


「お前を好きになったこと、後悔なんてしてない」


え……。


「だけど、もし、お前が俺を受け入れてくれたら……辛い思いをさせるだろうな、と思ってた。受け入れてくれた、今でも」


あぁ……。


「……どうして?」

どうして、そんなこと言うの?


「お前だって無意識にそうしてるだろ?」
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