ロンドン バイ ナイト
 きっと無理してる。

 プロ意識と言えばそれまでだけど、私はあの子と、客と娼婦の関係だけでいたいわけじゃないし、そうじゃないと言える自信くらいはある。

 今日もジルの時間を買ったけれど、ずっと抱きしめたまま他愛もない話をしただけ。

 どこかで緊張を解ける場所を用意してあげないと、あの子が壊れてしまいそう。

 それと、やっぱりあの事件が気にかかる。

 狙われているのは夜一人歩きしてる娼婦だけ、とはいえいつジルの娼館が狙われないとも限らない。

 他の子はどうでもいい。うん、冷たいとは思うけど、倫敦での数少ない友達の無事を願わずにはいられない。



 今度水晶宮に連れて行ってみよう。まだ、行ったことがないらしいから

     一八八八年 十月二日 ジュスティーヌ・ダレルの日記
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