ロンドン バイ ナイト

トマス・ミレット

 昨夜の趣向、その興奮を忘れぬためここに記す。

 紳士たるもの如何なる時も平静を保ち、礼儀を重んじるべきだ。

 しかしながらどうだ。昨夜のあれはどうなのだ。

 あれを見て、平静でいられる者などいるのか!

 あぁ、思い出しただけでペンに力が入る。

 イーストエンドまでの道のりが大変ではあるが(書くまでもないだろうが、そう、悪臭に悪路、なによりあのみすぼらしい街並みを見なければならない!)、あの館へ行くためなのだから仕方ない。あの劇場こそが私の探していた楽園だ。

 昨夜の少女の名はなんといったか、そう、確かメアリ・マーレイ。イーストエンド生まれにしてはあの金髪は極上。

 肉付きが悪いのは目を瞑るとして、七つから客をとっていたというのは伊達ではない。

 ねずみ嬲りはよく見に行ったものだが、少女嬲りとなると初めてだ。

 しかもねずみ百に対し犬一匹のねずみ嬲りとは大きく違う!

 狩人たる犬は三匹、そして少女はメアリ・マーレイただ一人。犬が駆けずり回ってねずみを殺す様を楽しむものと、一人の少女を三匹の犬がいたぶりまわすあの見世物。

 どちらがより素晴らしいかなどここに記すまでもない!


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