耳元で囁いて
旭はずっと、窓の外を見ていた。
こっちを...俺を、ずっと見てよ。
窓の外なんかじゃなく、俺を見てよ。
そう、願っても無理な話で彼女がこっちを向く事はない。
どうしたら、彼女の笑顔が見れるんだろう。
優しい言葉?
優しい態度?
そんなの...何の役にも立ちはしない。
彼女の前じゃ...無意味。
なんか...イラつく。
欲しいモノが手には入らないのが、こんなにもイラつくなんて思いもしなかった。
「俊、ほら。」
名前を呼ばれ、振り返ると目の前にジュースの缶が迫っていた。
「....っ!?」
俺は、反射的にその缶を取った。
「さすが俊、ナイスキャッチ。」
「やっぱお前か...拓海。」
「落ちこんだ時は、友達に話せってな。」
ニカッと、拓海は小さい子供のように笑った。
「あぁ、そうだな。」
俺は、拓海に近寄りながらジュースの缶を開けた。
この、ジュースの缶のようにキミの心の中も簡単に開けれる方法があるのなら...俺は、探しに行くよ。