耳元で囁いて
「....ッ。」
いや。
私を見ないで...。
私は...このままで...。
「旭?」
私は南の声を無視して平川君の顔を見た。
彼は、全てを見透かしたように私を見る。
その目に...その瞳に吸い込まれてしまいそう。嘘なんて、つけない。
「...もう、す...こし私を自由にして、欲しい。」
南の顔が見れない。
恐くて...。
南の手が私の肩に触れる。
「旭は...俺の事嫌いなの?愛してるって...言ったのは嘘なの?」
ビックリして南の顔を見た。
南の顔は、私が嘘って言えば今にも壊れてしまいそうな顔だった。
だからだ。
だから、南を離せない。
愛しているよ...けど。
いつからか、南の存在が苦しいものに変わったのは。
私が南を離せばきっと、南は...壊れて、狂ってしまうかもしれない。
だから...
「ううん、愛してる。だからこのままでいいよ。」
「うん、うん。旭ならそう言ってくれるって思ったよ。」
「うん。」
私は、南に抱きつく。