耳元で囁いて




「....ッ。」


いや。
私を見ないで...。
私は...このままで...。

「旭?」


私は南の声を無視して平川君の顔を見た。


彼は、全てを見透かしたように私を見る。


その目に...その瞳に吸い込まれてしまいそう。嘘なんて、つけない。



「...もう、す...こし私を自由にして、欲しい。」


南の顔が見れない。
恐くて...。



南の手が私の肩に触れる。


「旭は...俺の事嫌いなの?愛してるって...言ったのは嘘なの?」


ビックリして南の顔を見た。
南の顔は、私が嘘って言えば今にも壊れてしまいそうな顔だった。



だからだ。
だから、南を離せない。

愛しているよ...けど。
いつからか、南の存在が苦しいものに変わったのは。



私が南を離せばきっと、南は...壊れて、狂ってしまうかもしれない。



だから...



「ううん、愛してる。だからこのままでいいよ。」


「うん、うん。旭ならそう言ってくれるって思ったよ。」


「うん。」


私は、南に抱きつく。
< 30 / 56 >

この作品をシェア

pagetop