耳元で囁いて





「そろそろ、戻ろう?」

「うん。」


私は、上手く笑えてるかな。
南を...心配させてない?



いつから、南に気を使うようになったんだろう。


私達は教室に戻った後は、普通に過ごした。






「...旭、大丈夫?」


放課後になって、藍仔と二人きりの教室で日直の仕事をしていた。


「え?何が?」


急に聞かれて困った。



「最近、元気ないから。」

心配した顔で、私の顔を覗きこむ藍仔。


「大丈夫だよ。」


心配させない。
心配させたくない。


だから嘘をつく。


平気だよと言うように、にっこりと笑う。



「....そっ、か。」


一瞬、藍仔は悲しそうな顔を見せた。


「....藍仔、後は私がしとくから。帰っていいよ。」


「えっ!!いいよ、私も一緒に...。」


「いいから。」


「....ッ、分かった。」

藍仔は何か言いたげだったが、あえて聞かなかった。



< 32 / 56 >

この作品をシェア

pagetop