耳元で囁いて
彼は真っ直ぐと私を見つめて....
「俺....好きなんだ...橘さんの事。」
やっぱりだ。
けど私は、黙ったまま。それを見た山中君は、言葉を続けた。
「俺、一目惚れだったんだ。いつもクラスの中心で、明るい橘さんに...。」
一生懸命、気持ちを私に伝えてくれる山中君。
そんな彼に対して私の気持ちは残酷だ。
今、私は一生懸命彼の気持ちを断る言葉を考えている。
最低。
自分でも思う。
だから、気づかなかった。
だから、よけれなかった。
まさか、そんな事をされるなんて。
「....だから、つき合ってほしいんだ。」
「.....。」
もう、ほとんど彼の言葉は耳には入ってこなかった。
私は少し、間を空けた後、口を開いた。
「....山中君、ごめ...。」
断ろうとした瞬間だった。
彼に抱きしめられて、しかもキスされた。
私は一瞬の事で、何もできなかった。