耳元で囁いて
私は今、裏庭に向かって足を進めていた。
白い封筒を受け取った後私に去り際佐渡さんに、
『平川君、だいたい裏庭にいるから。』
そう言われたから。
まぁ、受け取ったのはいいけど...私、どうやって渡せばいい?
やっぱ、普通に...
「佐渡さんから。」って言って渡す?
そだよね...つか、それしかねーし。
つか、カバン持ってくれば良かった。
そんな事を思いながら私は、靴を履いて裏庭に出ると1人男が...そこにいた。
あれ、かな。
「平川...君?」
私が、呼ぶと彼が振り向いた。
その瞬間、私は彼の黒く澄んだ瞳に目が奪われた。
何者にも、動じないような強く、強く光る瞳は私を捕らえた。
何となくだけど...平川を好きになる理由が分かった気がする。
「何?」
「あ、あの....これ。」
言うはずだった言葉達は、彼を目の前にすると無意味になった。
思い通りに言葉が出ない。
精一杯だした言葉と共に白い封筒を平川に渡す。
彼は受けとると、
「これ、あんたの?」
と、聞いてきた。
私は首を横に振り、
「佐渡 美紀さんから...。」
そう、答えた。