耳元で囁いて
愛する資格が...ない?
何それ。
そんなの....
「いらないだろ?....資格なんて。誰かを好きになるのに、誰かの許可を得なきゃいけないの?」
「....ッ。」
「それって、ただ逃げてるだけだろ?....資格が無いとかそんな、適当な事言って逃げてるだけだろ。」
「.....。」
旭は、どこかをぼーっと見ていた。
けど、俺の言葉は届いてるみたいだった。
「....怖く...なったんだろ?愛すのが。...秋野の事で。」
“秋野”
その言葉を聞いた瞬間、旭はさっき泣き止んでいた涙が目に溜まって零れ落ちそうになっていた。
顔は、今にも壊れてしまいそうな歪んだ顔をしていた。
ずっと続く沈黙の中、旭は口を開いた。
「....そうだよ....怖かった。誰かを愛すのが....怖かっただけだよ。」
「.....。」
彼女は、歪んだ顔をしたまま笑った。
そんな顔さえも俺には愛しく思えた。