恋愛相談
赤い世界


まだひんやりとした春風が桜の花びらを運んで私の体に弱くくっついてくる。


それを払いよけながら重い足取りで歩き続ける。


学校への道のりは意外にきつく、坂道が多かった。


私はせっかくの新しいセーラー服を汗で湿らせてしまった。


まったく運動とは無縁の私には少しの坂道でもきつく感じた。


「…おい見ろよ。あんなでっかい制服あるんだな」



後ろの方で高笑いしている男子二人の声が私の耳に残る。


私は恥ずかしくてうつむいた。



中学の頃いじめられていた私は、地元をわざわざ離れて遠い高校へ通い、一人暮らしをする事になった。


初っぱなから笑われていたのでは、高校を変えた意味がなかったかもしれない…、と挫折しそうになった。



というのも、好きな人を見つけてしまったからだ。


自分の少し後ろの方にウォークマンを聴きながら歩いて来る短髪でさわやかな一際かっこいい男子だった。


ここの高校を選んだのも、その人が行くと分かっていたというのも理由の一つだった。


「優弥くん!おはよう」


私はハンカチで汗を拭いてから精一杯の笑顔でそう挨拶をする。


「おぉ!?枝島じゃん!何!?ここの高校受けたの?一緒じゃん!!」


優弥くんも負けずにニカッと笑いかけてくれた。


私はこの笑顔を見るだけで胸がいっぱいになる。私にって、一番の癒やしだった。


優弥くんだけは私を他の女子と同じように接してくれるのだった。


「同じ高校の奴いて良かったぁ。正直友達はみんな地元だから寂しかったんだよぉ」


優弥くんは泣き真似をして笑わせてくれた。


「私も、びっくりしちゃった!これからもよろしくね」


優弥くんは笑顔で返事を返してくれた。


私は坂道の辛さを忘れ、すっかり優弥くんとの会話を楽しんで歩いた。


優弥くん大好き!


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