Kissシリーズ・「クールなキス」
どんよりしているあたしを見かねたのか、彼が立ち上がった。

「紅茶で良い?」

「うん、紅茶好き」

彼の淹れてくれる紅茶は美味しいので好きだった。

少し顔を上げて、眼を閉じると―。

―唇にあたたかな感触。

「…えっ?」

眼を開けると、真っ赤な彼の顔。

「…好きだから、お前のこと」

熱っぽい声と眼に、あたしの心は強く揺すぶられた。

そのまま彼は部屋を出て行ってしまう。

けれど、あたしはぼ~としていた。

ああ、だから…あたしは彼から離れられないんだ。

あんな彼を知っているのが、あたしだけだから。

きっと一生離れられない。

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