短編集『固茹玉子』
「ふう」

その騒乱のどさくさに現場を離れた俺は、俺の相棒が囚われている、かつてはボスと呼んでいた男の住まいへと向かった。

普段なら門を守っている筈である見張りの姿も無い。きっと俺を探す為に総動員されているのだろう。それにさっきのガス爆発の救助にも駆り出されている筈だ。

「これは好都合だな」

耳元で跳ねた弾丸の所為で鼓膜が破れたらしい俺の声は、耳から入るというよりも、心にそのまま反響しているかのようだ。


< 15 / 93 >

この作品をシェア

pagetop