短編集『固茹玉子』
  カラカラッ

……とうとうヤツが入って来た。

  カシッ カシッ カシッ

ヤツは俺の姿を求めて、鋳物で出来た床を踏み鳴らし、うろうろと動き回っている。

すえた油のような臭い。

ベタベタとまとわり付くような空気。

頼りの仲間はつい今しがた息を引き取っていた。俺の命も風前の燭(トモシビ)だ。

この部屋へ出入りするのに道はひとつしか無い。それも今しがたヤツの手に依って塞がれた。


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